臨床検査技師の給料が「安い」と感じる本当の理由― データと現場から見えた“違和感の正体”  ―

【臨床検査技師の平均年収は504万円!】なのに実感は「安い」ーそのズレの正体とは

「臨床検査技師って給料安いよね」

同期との会話で、SNSで、転職サイトで。

この言葉を何度も目にしてきました。

国家資格を持っているのに。

命に関わる検査をしているのに。

専門知識が必要な仕事なのに。

でも、厚生労働省のデータを見ると、平均年収は約504万円。

日本の平均と比べても決して低くない数字です。

それなのに、なぜ多くの臨床検査技師が「給料が安い」と感じてしまうのでしょうか。

この記事では、データと現場経験の両方から、その”違和感の正体”を解き明かしていきます。

目次

臨床検査技師の給料は「本当に安い」のか?

まず、感情論を一旦脇に置いて、数字で事実を確認してみましょう。

厚生労働省のデータが示す実態

令和6年の賃金構造基本統計調査によると、臨床検査技師の平均年収データは以下の通りです。

平均年収:約504万円
平均年齢:40.4歳
勤続年数:11.3年

この数字を見て、どう感じますか?

実は、日本の全産業平均年収と比較しても、臨床検査技師の年収は決して低くありません。

むしろ、データ上は「平均以上」に見えるのです。

医療職の中での立ち位置

他の医療職と比較すると、こんな順位になります。

1.薬剤師(556万円)
2.診療放射線技師(543万円)
3.看護師(508万円)
4.臨床検査技師(504万円)

看護師とほぼ同水準。理学療法士や作業療法士、介護職と比べれば明らかに高い位置にいます。

データだけを見ると…

数字だけを冷静に見れば、「臨床検査技師=給料が安い」とは言い切れません。

でも、現場で働く多くの人が「割に合わない」「もっともらえてもいいはず」と感じているのも事実です。

この”ズレ”は、いったい何なのでしょうか。

なぜ504万円でも「割に合わない」と感じるのか

ここからが、この記事の核心です。

平均年収504万円という数字の裏側には、見えにくい構造が隠れています。

平均年収には「誰の給料」が含まれているのか

この504万円という平均値には、さまざまな働き方・働く場所の人たちが混ざっています。

・大学病院の技師
・地方の総合病院
・クリニック勤務
・検査センター
・メーカー勤務
・外資系企業の研究職
・管理職

高年収の人も、低年収の人も、すべてを含んだ「平均」なのです。

多くの技師が働く”一般的な病院やクリニック”の実感とは、どうしてもズレが生まれます。

平均年収の「種類」にも罠がある

実は、平均年収には2つの”顔”があります。

厚労省の実績データ:504万円 → 実際に働いている人の年収(当直・残業・夜勤込み)
求人サイトのデータ:約363万円 → 基本給ベースの提示額

この約140万円の差。

これこそが「当直・残業の上乗せ分」なのです。

求人票を見て「こんなものか」と思っていた年収が、実際には夜勤や当直を積み重ねることで500万円に届いている。

多くの人が、この構造を無意識のうちに受け入れています。

そもそも成果が収入に直結しにくい職種構造

臨床検査技師の仕事は、診療報酬で点数が決まっています。

どれだけ丁寧に検査をしても。

どれだけ件数をこなしても。

基本的に報酬は一定です。

営業職のように「成果を出せば給料が上がる」仕組みではありません。

IT業界のように「スキルが高ければ転職で倍になる」世界でもありません。

努力や能力が、給料に直結しにくい。

これが、医療職全体に共通する構造です。

年収の正体は「基本給」ではなく「負荷の対価」

私が感じた負荷の対価

ここで、私自身の経験をお話しします。

病院で働いていた頃が年収は一番高かったです。でも、その内訳を冷静に見ると…

・月4〜5回の当直
・時間外の呼び出し対応
・夜間の緊急検査
・休日出勤

当直手当や時間外手当がなければ、一人暮らしを続けるのは正直厳しい金額でした。

収入が上がる分、時間・体力を削っている。

「スキルの対価」ではなく「負荷の対価」だったんです。

当直を抜いたら見えた「本当の基本給」の姿

クリニックに転職したとき、率直に感じました。

真彩

当直がなかったら、こんなに年収が下がるのか…

転職エージェントにも、こう言われました。

「臨床検査技師の場合、当直がなくなると年収は大きく下がります。これは誰でも同じですよ」

この言葉で気づいたんです。

これは私だけの話じゃない。エージェントは業界全体を見ている。

つまり、これは”よくある話”であり、構造の問題なんだと。

データ上は高く見えるのに、現場では満足できない理由

ここまでの話を整理してみましょう。

厚労省が発表している504万円という平均年収。

これは、当直・残業・夜勤をすべて含んだ「実績値」です。

つまり、負荷をかけた結果の数字なんです。

一方で、私たちが給料を考えるとき、無意識に基準にしているのは「基本給」や「求人票の提示額」です。

手取りを見て「これで生活できるか」と考える。

ここに最初のズレがあります。

そして、ワークライフバランスを優先して当直のない職場を選んだとき、初めて気づくんです。

「あれ、年収ってこんなに下がるんだ」と。

でもこれは、給料が「安くなった」わけではありません。

もともと基本給はそのくらいで、当直や残業で上乗せされていただけ。

それが「見えていなかっただけ」なんです。

高収入な臨床検査技師も「存在はする」

もちろん、高年収の技師もいます。

条件が揃えば年収は上がる

・大規模病院・高度急性期病院
・管理職や専門領域のスペシャリスト
・夜勤・当直・残業込みの働き方
・地方の人材不足エリア
・メーカーや外資系企業

実際、50代後半になると平均年収は約701万円までピークを上げます。

長く勤め、管理職になり、専門性を高めれば、収入は確実に上がっていく職種ではあるのです。

でも、誰でも再現できるわけではない

ただし、これには条件があります。

・ポジションや枠が限られている
・体力・生活リズムへの依存が大きい
・家庭との両立が難しくなることも
・長期的に続けられるかは別問題

「頑張れば報われる」という単純な話ではないのが、この業界の難しさです。

じゃあ臨床検査技師は”報われない仕事”なのか?

ここで、絶望してほしくありません。

臨床検査技師という仕事が報われないわけではありません。

・業界内でも収入差は大きい
・働き方でフェーズは変えられる
・体力・時間・メンタルを立て直す転職もある

年収が下がったとしても、それは必ずしも「失敗」ではありません。

自分の人生に合った選択をすることの方が、よほど大切です。

(関連記事:【転職失敗?】転職で年収が下がっても後悔しなかった理由|臨床検査技師のリアル体験

給料に納得できるかは「比較対象」で決まる

もうひとつ、冷静に考えてほしいことがあります。

「給料が安い」と感じるとき、あなたは誰と比べていますか?

・外資系企業やメーカー勤務と比べれば → 低い
・飲食・介護・保育と比べれば → 高い
・同じ医療職の中で比べれば → 中間

「誰と比べているか」で、評価はまったく変わります。

不満の正体は、給料そのものではなく、「国家資格だから・命に関わる仕事だから当然高いはず」という社会的な期待値と、実際の給与体系とのズレなのかもしれません。

まとめ|給料が「安い」と感じたときに考えてほしいこと

臨床検査技師の給料は、データ上は決して安くありません。

でも、現場感覚として「割に合わない」と感じる人が多いのも事実です。

その理由は、

・当直ありきの年収構造
・平均値のマジック
・働き方の変化による収入の変動
・期待値と現実のズレ

にあります。

大事なのは、「給料が安いかどうか」ではなく、その給料が今の自分の人生に合っているかどうか。

当直をこなして年収を上げるのも選択肢。

ワークライフバランスを優先して年収を下げるのも選択肢。

どちらが正解ということはありません。

まずは、この業界の構造を知ること。

そして、自分が本当に大切にしたいものを見つめ直すこと。

それが、納得できる働き方への第一歩になるはずです。

あなたの感じている「安い」という違和感は、おかしくありません。

それは構造が生み出しているものだから。

でも、その構造を理解すれば、次の一歩が見えてきます。

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